基礎知識
戦闘関係
SF編の名の通り、SF映画・SF漫画・SFアニメからのネタが多数含まれる。
SFC版攻略本では、元ネタとしてSF映画「2001年宇宙の旅」と「エイリアン」が挙げられている。
コンピュータが表示する文字がアルファベット・数字・カタカナのみであるあたりは、近未来編と同じくレトロフューチャー感もある。
ゲーム内の描写を見る限り、ディスプレイに日本語表示する際、漢字もひらがなも表示可能なくらいの技術力はあるはずだが(現にリメイク版発売の2020年代では、ゲーム機ですら各国語の文字種をすべて表示できる)、このあたりからも、SF編が「厳密な科学的考察に基づくSF」というより、「様々な名作SF作品をオマージュした、ゲームとしてプレイした時に面白いシナリオ」であることを感じさせてくれる。
また、コンピュータが表示する日本語をカタカナのみにしたことが、結果として印象的なホラー演出につながっていることは、プレイすればわかる通りである。
本作の「黒い背景に緑色に発光した文字」はオシロスコープ、ひいては昭和の時代のコンピュータの表示が元ネタだろう(下の1972年発売のディスプレイ端末機「IBM 3270」のリンク先の実物の写真を参照)。現在でもWindowsパソコンでPowershellなどのコマンドラインインターフェイスを起動すると、初期設定ではだいたい黒~濃い青の背景に緑や白の文字列が表示されるが、これらも当時の名残りである。
レトロフューチャーネタとしてはもうひとつ、現代に携帯電話が普及する前のSF作品の大半がそうであったように、乗組員たちが携帯電話のような小型通信端末で連絡を取り合っているような描写は存在せず、固定されたコンピュータを通しての通信しかしていないようである。
何らかの事情で船内での無線通信ができないのかと思えばそうでもなく、最終盤に「通信ユニット」が登場している。しかも高機能そうなキューブに通信機器が内蔵されている様子もない(作業機械として登録した割に、キューブは「パワージャッキ」も積んでいないので、カトゥーとしてはこれから様々な機能を追加するつもりだったのかもしれないが……)。
一方でSF編は、リメイク版において、テキストの変更がかなり多め。
ストーリーの大筋こそそのままであるが、「AI」など2020年代において一般的になったコンピュータ用語が多く取り入れられている。
登場キャラの性格や心理描写はSFC版の時点でもかなり凝っていたが、乗員の個室の私物が調べられるようになったことで、より丁寧に描かれている。SFC版ではプレイヤー視点だと嫌味な部分が前面に出ていたカークであるが、私室に置かれた私物から、実際にはパイロットとして優秀であり、SFC版にもあったレイチェルとのメールでのやりとりと合わせ、レイチェルが彼に惹かれる理由がきちんとわかるようになっているし、そのレイチェルの精神面の脆さ・カークへの思い(と共に、カークへの依存)もより強調され、ホラー演出の強化にもつながっている。
他にも、「人間」そのものに関する描写がより強化されている箇所も見られる。たとえばカークが亡くなった後、ダース伍長はベヒーモスの様子を見に行くが、SFC版ではベヒーモスについて「軍はこいつの力を兵器に利用するつもりだろう」と言うが、リメイク版では「お偉いさん方はこいつの存在も金のなる木だ、政治という戦争に利用するつもりだろう」というように変更されている。
後者の方がより人間の狡猾さを感じさせる上、OD-10も当然この言葉を聞いていたはずである。
TIPSによるメタ演出が追加されたのも、プレイした方ならご存知の通り。
SFC版・リメイク版両方をお持ちであれば、比較しながらのプレイも面白いだろう。
SF編には、デザイン担当の田村由美先生が小学館のゲーム雑誌「ゲーム・オン!」1994年10月号に描き下ろした「SF編序章 Space Trap」という、SF編本編の前日譚の短編漫画がある。
SF編は人物描写の細やかさに定評があるが、コギトエルゴスム号の乗員たちについて更に考察を深めたいのなら、「SF編序章 Space Trap」もおすすめである。
漫画でもコギトエルゴスム号内部の人間模様はしっかり描かれており、SF編本編の描写を補強してくれる。
現在では、「田村由美デビュー40周年記念本 KALEIDOSCOPE」に収録されており、Kindleなど電子書籍版で読むことも可能。
田村先生の話についての余談になるが、リメイク版でのSF編登場キャラの声優に、田村先生の作品がアニメ化などされた際によく出演する井上和彦氏や佐々木望氏が起用されている。中でも佐々木望氏は、かねてから「ライブ・ア・ライブ」のファンで、25周年記念イベント「LIVE A LIVE A LIVE 新宿編」に田村先生と訪問したことがきっかけでリメイク版に声優として出演することになったと、「LIVE A LIVE 30周年大感謝祭 ―蒲田編―」パンフレットでプロデューサー時田貴司氏がコメントしている。
1968年のSF映画。
攻略本で元ネタとされている通り、ストーリーや設定には本作の元となったネタが随所に存在する。
宇宙船ディスカバリー号内のデザインや描写(コールドスリープカプセルや内部の意匠等)は本作のコギトエルゴスム号にも反映されている。
本作の「船のAIが人間によって出された命令の矛盾から暴走」「船のアンテナの故障」「船外活動中に宇宙服に異常」「コールドスリープカプセル中の乗組員が生命維持装置を切られる」などは、「2001年宇宙の旅」と共通している。
また、SF編のみならず原始編の元ネタも含まれている。
未知の存在「モノリス」は原始編「モノな石」の元ネタ、コンピューターHAL9000は本作のOD-10の元ネタになる。
映画の監督や脚本をつとめたスタンリー・キューブリック氏から、SF編主人公の名前「キューブ」が生まれた……と説明されていたこともあるのだが、実際にはデザインを担当した漫画家・田村由美先生の絵から、作中のカトゥーのように「丸いけどキューブ」の発想で生み出され、後付でキューブリックのネタが付け加えられたそうである。
時田貴司氏のポスト及び返信を参照のこと。
なんと、そうだったっけ!? https://t.co/oaB8Tpl1dw
— Takashi Tokita / 時田貴司 (@Takashi_Tokita) October 7, 2022
なお、スタンリー・キューブリック氏の綴りは「Stanley Kubrick」であり、「Cube」は含まれない。
下の「名前の表記について」という項目も参照されたし。
1979年のSFホラー映画。
閉鎖空間である宇宙船内で、未知の生物に次々とクルーが襲われるパニックホラー作品であり、本作におけるベヒーモスの元ネタになる。
宇宙貨物船が舞台であることや、伍長が極秘で受けていた、犠牲が出ようとも未知の生命体を回収しろ、という命令もこちらが元ネタになる。
また、宇宙船を制御するAIの名前は「マザー」(形式名は「MU-TH-UR 6000」)であり、本作のラストボス「マザーCOM」の名称の元ネタと思われる。
リメイク版収録の英語版では「マザーCOM」が「MUR-TH-UR Matrix」となっており、「MU-TH-UR 6000」が元ネタなのは明らかだろう。
※エイリアンの描写が若干グロテスクなので、苦手な方は注意。
SFC版の時点でも登場人物たちの名前はSF関連が元ネタと推測されているが、リメイク版で新たに設定されたフルネームにおいてもSFが元ネタと思われるものがいくつかある。
ただし全て推測の上、一般的な名前・名字も多いことから、複数のネタが考えられる点に注意。
ヒカル・スールー(ミスター・カトー) - Wikipedia
名前の「ヨシユキ」はリメイク版で新たに設定されたが、SFC版での「ヨシユキ」、リメイク版における「陸奥守吉行」が由来かは不明。他キャラがSF関連が由来であるだけに、「陸奥守吉行」ではなく他の由来がありそうである。「機動戦士ガンダム」シリーズなどの監督・富野由悠季氏が元ネタ説もネットでは見かける。
「カトゥー」は「スタートレック」シリーズのヒカル・スールー、日本語版でのミスター・カトー(カトウ)から。原語版と日本語版でキャラ名が異なる理由は上リンク先を参照(なお、リメイク版「ライブアライブ」収録の英語版では、SF編キャラの名前は日本語版でも英語版でも同じ)。
リメイク版は日本語以外の言語もローカライズされて収録されているが、中国語繁体字版だと「ヨシユキ・カトゥー」は「義幸・加藤」となっている。
「陸奥守吉行」とは一致せず、また、富野由悠季氏の本名は「富野 喜幸」であり、「義幸」ではない。
結局のところ、「ヨシユキ・カトゥー」の「ヨシユキ」の由来はよくわからない。
「カーク」は「スタートレック」シリーズの「ジェームズ・T・カーク」から。
「ウェルズ」はSF作家ハーバート・ジョージ・ウェルズ(H・G・ウェルズ)氏から。
「スタートレック」シリーズの最初の作品である「宇宙大作戦」に登場したカークによる、エンタープライズ号へ転送帰還する時の指示「チャーリー、転送を頼む(Beam me up, Scotty)」は流行語のように扱われており、本作におけるカークの口癖「そんなのワープでやっちまえ」の元ネタになったのかもしれない。
なお、「スタートレック」シリーズにおいて、「チャーリー、転送を頼む」に近いセリフはあるものの、実際には作品内でカークがこのセリフを発したことはないという。本作のカークも作中では「そんなのワープでやっちまえ」のセリフを実際に発しておらず、カトゥーが思い出話として語るのみである。
リメイク版発売時にはかろうじて、公式のLINEスタンプでカークのセリフに採用された。
「レイチェル」はフィリップ・K・ディック氏のSF小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の登場人物からか。映画「ブレードランナー」の原作でもある。
「クライン」はSF作家であればオーティス・アデルバート・クライン氏、または「クラインの壺」か。
英語版での綴りは「Rachel Klein」になるが、「Rachel Klein」の同姓同名の人物はSF関連以外にも多数いる。
一般的な名前ゆえに、確実にこれと言える由来は筆者にはわからない。
なお、「ファイナルファンタジーVI」に登場するレイチェルも連想させる、という意見もある。
「ファイナルファンタジーVI」のレイチェルは、プレイヤーキャラのひとりロックの恋人だったのだが、ロックと共に行動していた際に事故で記憶を失った上、戦乱に巻き込まれ亡くなる。その経緯ゆえにロックはひどく後悔し、レイチェルの遺体は密かに保管され、彼女を魔石「フェニックス」で蘇らせようとしていた。
本作では立場が逆になり、レイチェルが恋人のカークの遺体を自室へと移動している。
1972年公開のSF映画「サイレント・ランニング」に登場する作業用小型ドローンの2号機の名前が「ヒューイ」、また、この映画の監督がダグラス・トランブル氏であり、「2001年宇宙の旅」「ブレードランナー」にも関わっている。
なお、「サイレント・ランニング」に登場する小型ドローン3機の名称「ヒューイ」「デューイ」「ルーイ」の元ネタはディズニーのキャラクター・ドナルドダックの3匹の甥っ子たちの名前である。
ダグラス・トランブル氏は「2001年宇宙の旅」でワイヤーフレームのアニメーション制作に関わっている。
3DCGの黎明期における3D表現はワイヤーフレームから始まったが、「2001年宇宙の旅」が公開された1968年当時にも存在はしていたものの、実際の映画では「針金で作った模型を撮影してアニメーション処理」という、3DCGっぽく見せた映像だったという。まだ一般に3DCGを取り扱う技術が浸透してはいない時代であった。
一方でワイヤーフレームを取り入れたゲームは1980年代に多数登場しており(初期はアーケードゲーム)、SFC版発売の1994年には、既に「ややレトロな表現」であった。
そして本作では、SF編ラストボスのマザーCOMの見た目がワイヤーフレームであり、「2001年宇宙の旅」を反映している。
マザーCOMを向き変えするとワイヤーフレームではない全く異なる姿になる、というネタはSF編攻略でも紹介した通りである。
「ビショップ」は「2001年宇宙の旅」の月面シャトル船長役、エド・ビショップ氏からと思われる。
名前の「ホル」の由来は不明だが、リメイク版での追加点から考えられる可能性について記す。
リメイク版にて船長の私室に馬に関係するものがいくつか置かれており、馬が好きだったことが示唆されているが、「ホル」と「馬(英語でhorse)」から、荒木飛呂彦氏による漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の「Part3 スターダストクルセイダース」(連載:1989年~1992年)の登場人物、ホル・ホースが由来の可能性がある。
ジョジョの奇妙な冒険 > スターダストクルセイダース - Wikipedia
ただしホル船長とは、「パイプをくわえている」(ホル・ホースは咥えタバコから禁煙パイプに変わったという経緯がある)くらいしか共通点がないので、逆にリメイク版制作時に「ホルという名前からホル・ホースを連想して、馬に関係するものを私室に設定した」という可能性もある。
一応、中世編のストレイボウの名前の由来が「ジョジョの奇妙な冒険」からだという時田貴司氏からの明言があるため(詳細は中世編解説を参照)、SFC版の時点でも、「ジョジョの奇妙な冒険」由来のキャラがストレイボウ以外に居たとしても不思議ではないが、いずれにしてもSF要素がほぼないことから、由来としては怪しい。
SF要素を元ネタとするなら、考えられそうなのは、「HAL9000」のHALをもじったものか。
結局のところ由来は不明。
SF映画「スター・ウォーズ」シリーズの悪役ポジションでアンチヒーロー、ダース・ベイダー(ダース・ヴェイダー)の「ダース」が由来か。
SF編序盤はプレイヤーに対し、ダース伍長に悪い印象を抱かせるようシナリオが展開するが、名前でも怪しい人物という演出を試みたのかもしれない。
カークの個室のコンピュータで彼の個人ファイルの日記を見ると、デトロイトでのモーターショウの日程が報じられた、と書かれている。
アメリカ合衆国・デトロイトで毎年開催されている北米国際オートショーのことと思われる。
ベヒーモス(behemoth)は旧約聖書に登場する獣の名称。中世以降は悪魔として扱われることになるなどの経緯は上サイトなどを参照。
スクウェアのRPGではファイナルファンタジーシリーズをはじめ、敵キャラとして頻繁に登場する。ほとんどの作品で「強い雑魚敵」として登場しており、本作では(ゲームシステム上)戦うことすらできず、接触するだけでゲームオーバーになってしまうほど強い。
SFC版取扱説明書、小学館のSFC版攻略本、漫画「SF編序章 Space Trap」では、ベヒーモスを捕獲した惑星の名前が「マシーナ」と設定されているが、ゲーム内ではSFC版・リメイク版ともに言及されていない。
「マシーナ(Machina)」はラテン語で「機械」を意味する。「機械」の名を持つ星の生命体が、他の星の機械に翻弄されるという皮肉である。または「丸いけどキューブ」に通じる言葉遊びだろうか。
ベヒーモスが逃亡してからは、LEVEL 1(1階)とLEVEL 2(2階)に出現するようになるが、コギトエルゴスム号においてフロアを移動する方法はエレベータと通風孔しかない。
通風孔はどう見てもベヒーモスが通れるとは思えない上、4足歩行でハシゴの上り下りは不可能だろうから、エレベータを使ったとしか考えられない。OD-10がベヒーモスを誘導していたのだろう。
(キューブもハシゴの上り下りができる構造には見えないが、ゲーム画面では背面を向けた状態でハシゴを上下移動しており、プレイヤーには見えないが何かしらの方法で器用に移動しているのだろう。……おそらくだが)
田村由美先生によるベヒーモスのデザイン画は「ライブアライブ オリジナル+HD-2D イラストレーションズ」などで見ることができるが、デザイン画には「キリンビール+ドドンゴということで…」というメモがある。
「キリンビール」はロゴデザインの「麒麟」、「ドドンゴ」は特撮「ウルトラマン」に登場する「ミイラ怪獣 ドドンゴ」のことと思われる。
本作のベヒーモスの見た目に反映されており、特にリメイク版ではデザイン画にかなり忠実なドット絵となっている。
本作においては「異種生命体」「軍が捕獲した新種の生命体」であり、作中でどのような経緯で「ベヒーモス」という名前が付けられたのかは不明であるが、便宜上付けられたコードネームのようなものだったのだろうか。
リメイク版ではベヒーモスのTIPSで識別番号が「SHVC-5V」と表記されているが、これはSFC版「ライブ・ア・ライブ」の型番である。
また、TIPSでは、
とあるのだが、この書き出し方は2008年開設の共同創作コミュニティ「SCP財団」(SCP財団 - Wikipedia)の「アイテム番号」「オブジェクトクラス」の記述っぽくなっている。
「SCP財団」に投稿される創作物はSFやホラーが多く、ジャンルとして本作との共通点があるが、元ネタとしているかどうかはわからない。
キャプテンスクウェア関係のネタをまとめて紹介。
なお、「キャプテン・●●●●●」という名称は、「キャプテン・アメリカ」以外にもフィクションに多数存在するため、他のネタも考えられる。
SFネタだとエドモンド・ハミルトン氏による小説「キャプテン・フューチャー」(キャプテン・フューチャー - Wikipedia、1940年~1951年発表。日本では1978年~1979年にアニメを放送)や、1977~1979年連載の松本零士氏原作の漫画「宇宙海賊キャプテンハーロック」(宇宙海賊キャプテンハーロック - Wikipedia、アニメ版もある)などが挙げられるだろうか。
物理学・宇宙物理学の用語が多数含まれている。
「ファージ」のみウイルスのこと、つまり生物学からのネタだが、「スペースファージ」という名前から「宇宙の未知のウイルス」のような意味だろう。毒麻痺弾を放つ技という説明があるので、宇宙の未知のウイルスが生み出す毒を利用している、ということかもしれない。
タイトル画面、クリア時のクレジット表記にあるキャプテンスクウェアの(架空の)開発メーカー。リメイク版ではTIPSでも言及されている。
ARUMATを逆から読んで「TAMURA」、つまりデザイン担当の漫画家・田村由美先生のことである。
また、タイトル画面右下に登場するフクロウのイラストは、田村由美先生の漫画「BASARA」に登場するフクロウの新橋そっくりである。
クリア時には(架空の)スタッフロールが流れるが、スタッフの名前は明らかに本名とは思えないペンネームらしきものが並んでいる。
ファミコンや同時期のPCゲーム・アーケードゲームのスタッフロールといえば、開発スタッフは本名ではなくペンネームが並ぶのが恒例であったので、そのパロディと思われる。
当時、なぜ本名ではなくペンネームを掲載していたのかについては様々な理由があったようなので(理由はひとつではなく、メーカーによっても事情が異なっていたようである)、気になったら調べていただきたい。
キャプテンスクウェアは全9ステージで、それぞれが太陽系の惑星の名称となっている。
順に「MERCURY」(水星)、「VENUS」(金星)、「EARTH」(地球)、「MARS」(火星)、「JUPITER」(木星)、「SATURN」(土星)、「URANUS」(天王星)、「NEPTUNE」(海王星)、「PLUTO」(冥王星)。
冥王星は1930年に発見されてから2006年まで太陽系の惑星であり、SFC版が発売された1994年もまだ冥王星は太陽系の惑星であったから、最終ステージとして冥王星が設定されている。
リメイク版発売時には冥王星は太陽系の惑星ではなくなってしまったが、キャプテンスクウェアでは特に変更点はない。
リメイク版設定の「1994年9月2日発売のレトロゲーム」ならば、冥王星を太陽系の惑星として扱っていて不思議はない、ということでリメイク版でこのような説明が追加されたのかどうかは不明。
何にせよ、冥王星を最終ステージとすることで、レトロゲーム感が増すことになるとは、SFC版発売当時は誰も考えもしなかっただろう。
太陽系の惑星の定義が変更されて、惑星だった冥王星が惑星ではなくなってしまうなど(一応「準惑星」ではあるが)、天文学に詳しくない一般人には思いもよらぬ出来事だったのである。
リメイク版TIPSでは「1994年9月2日発売のレトロゲーム」とされているが、この日付はSFC版「ライブ・ア・ライブ」の発売日である。
ただし、ゲーム内ではクリア時に「PRESENTED BY ARUMAT SOFT 2099」と表示されるため、カークが持ち込んだ筐体は2099年にリメイクか移植などがされたバージョンということになるのだろうか。
また、この点からSF編の舞台は2099年以降と考えられる(ただし西暦かどうかは不明)。
リメイク版TIPSでは、キャプテンスクウェアのハイスコアを争う大会で上位入賞者には金色のソフトが送られ、高額で取引されているとある。
実際に非売品の金色のカートリッジソフトが高額で取引されている例として、ファミコンの「ロックマン4」「パンチアウト!!」「オバケのQ太郎」「キン肉マン マッスルタッグマッチ」などいくつか存在しており、これを元ネタとしたテキストと思われる。
キャプテンスクウェアに「金色のソフト」が存在するということは、元の「キャプテンスクウェア」はカートリッジタイプのゲームソフトなのか、カークが持ち込んだ筐体のようにアーケードゲームとしても展開していたのか、それともカークはカートリッジタイプの「キャプテンスクウェア」が動く端末(だとしたら相当旧型のコンピュータだろう)を持ち込んだ、ということになるのか、そのあたりは謎である。
「ハイスコアを争う」割には作中ではスコアが一切表示されない、という点でもカークが持ち込んだ筐体には謎が残る(本作の戦闘の仕様を流用したため、スコアが表示されないのはメタ的には仕方のないことである)。
マザーCOMについては「エイリアン」の項目で説明した通り。
なお、ラストバトルであるマザーCOM&スタビライザー戦は、本作と同時期に開発・発売された「クロノ・トリガー」における未来のコンピュータ、マザーブレーン&ディスプレイ戦と似た要素が多い。「マザー」の名を冠するコンピュータの暴走、お供として出現するスタビライザーとディスプレイはどちらもHP回復しか行わない、など。
「Clicker Rock」なら「クリック音を発する岩」のような意味。
リメイク版収録の英語版では「Clickarock」、つまり「Click a rock」(岩をクリック)なのでこちらの方が英語としては意味が通じるだろうか。
「KMGLEDR」「KRKZARM!」といった、全く意味がわからないスキルを使用するが、これがクリックした時の音なのだろうか。いずれにしても謎である。
使用スキルに「ヘディング」がある、羽が生えた見た目なので鳥(バード、bird)っぽい、とそのままの命名だろう。
「ファイア(fire)」「ウォーター(water)」と、ヘディングバード以上にそのまま。
技名だが、ウォーターの「アクアフレア」、ファイアの「ペトリフレア」ともに、「フレア(flare)」部分は炎や爆発による攻撃であることを示していると思われる。「フレア」自体はスクウェアのゲームの炎・爆発系魔法の名称でもおなじみ。
この「フレア」の前に「アクア(aqua)」をつけることで「アクアフレア」で水属性の爆発ということだろう。
「ペトリフレア」の「ペトリ」部分は、「石化する、硬直させる」などの意味の「petrify」から取られていると思われる。石化の追加効果付きの爆発という意味合いなのだろう。
ファイア&ウォーターが出現するステージは「EARTH」(地球)であり、液体の水が豊富に存在していることからウォーターを敵として設定したのではないかと思われる。ファイアは火を扱う人類の象徴の意味合いであろうか。
「Mother tail」と「Puppy tail」であろう。「tail」は「尾」なので見た目から。
「Mother(母)」と「Puppy(子犬)」なので、一応親子という設定なのだろう。
技の「シュリンピング」は「shrimp(エビ)」「shrimping(エビ漁)」から。これもマザーテイル&パピーテイルの見た目からだろう。
「リストレーション」は「restoration(修復、復元)」、「ラブヒーリング」は「love(愛) healing(癒し)」と、英語そのままの意味。
デザイン面では映画「エイリアン」に登場するエイリアンをモチーフとしているようにも見える。
「Cosmo Stroller」なら「宇宙の放浪者」のような意味合い。
技の「パルサーウォーク」は、物理学の用語「パルス」「パルサー」から取られたと思われる。
リメイク版収録の英語版では「パルサーウォーク」が「Pulsing Wake」となっており、こちらだと「電気信号の痕跡」のような意味合いであろうか。
電撃地形を発生させる(痕跡を残す)という、技の効果とも合致している。
「Gem」と「parapet」に分けると、「Gem」は宝石、「parapet」は欄干、屋上などの周囲を囲む低い壁のこと。
リメイク版収録の英語版でも「Gemparapet」である。
ジェムパラペットの技「SIO2」は二酸化ケイ素の化学式「SiO2」から。石英(クリスタル)はSiO2の結晶である。
「シリコン樹脂」という技も使うが、シリコン(silicon)はケイ素の英語名。
「シリコン樹脂」はケイ素を含む合成樹脂のことであるから、「SIO2」「シリコン樹脂」ともにケイ素化合物のことである。
化合物が技名というのもよくわからないといえばわからないが、石英をぶつけるとか、樹脂で固める攻撃といったイメージなのだろうか。ゲーム内のモーションではいまいちわかりにくい。
「ミラージュ」は「mirage(蜃気楼)」のこと。
英語でも「mirage」と表記するが、元はフランス語であり、ここにスペイン語の定冠詞「El」がついて「El Mirage」である。
なお、アメリカには「エル・ミラージュ」という地名が実際にあったり(エル・ミラージュ (アリゾナ州) - Wikipedia)、「El Mirage」という楽曲も多い。
ただしリメイク版収録の英語版だと、エレ・ミラージュが「Electric Mirage」となっているため、日本語版も「Electric Mirage(エレクトリック・ミラージュ)」の意味なのだが、技名が最大8文字の制限があるため、縮めて「エレ・ミラージュ」とした、という可能性がある。
技の「エレクトンナイフ」も、文字数制限で「エレクトロンナイフ」を1文字削った可能性がある。英語版では「Electron Knife」である。
「ピムリ」については、これといって元ネタらしいものが見当たらない。
強いて言えば、SFC版だと電撃地形のビジュアル(=SFC版におけるピムリのビジュアル)が真上から見たピラミッドのように見えなくもないため、「ピラミッド(Pyramid)」から取ったという可能性があるかもしれない。
リメイク版収録の英語版だと「Pymli」だが、このような単語はどの原語にもないようである。一応「Pyramid」からの造語という可能性はなくはないが……。
ラ・ラとラ・ルの元ネタははっきりしない。
あり得そうなのは1955年のディズニー映画「わんわん物語」の挿入歌「La La Lu(ララルー)」である。子守唄であり、歌詞に「きらめく星」という言葉も入っている。
使用スキル「すたーばすたー」は、1990年発売のスクウェアのRPG「Sa・Ga2秘宝伝説」のラストボス・最終防衛システムの使用技「スターバスター」が元ネタと思われる。
「スターバスター」は全体攻撃であり、本作の「すたーばすたー」も範囲攻撃で、どちらも威力は高い。
「Sa・Ga2秘宝伝説」については幕末編解説でも触れているので参照のこと。
「スターバスター」自体は「star(星)」「buster(破壊するもの)」の意味。
「polka dot」は英語で「水玉模様」のこと。
つまりポルカドットの見た目そのままである。
使用技の「トペ・スイシーダ」は、実在するプロレス技である。
体当たりを行うダイブ技であり、本作でも遠距離から体当たりを仕掛けるという形で再現されている。
英語の「stabilizer(安定させるもの)」から。自動車や飛行機などの部品名(安定化装置)として知っている方も多いだろう。
技の「システムリカバー」も「system(システム)」「recover(回復する)」と、技の効果そのままである。
キューブのスキル8種の頭文字を繋げると「HUMANISM」、ヒューマニズムとなる。
キューブのスキルの説明で「M/精神解析:相手を眠らせる」のように頭文字を強調していることから気付いたプレイヤーも多いだろう。
各技の名称自体は英語由来である(「ハイスピードオペ」の「オペ」部分は手術のことだが、手術をoperationから「オペ」と言うのはドイツ語由来。日本における医療用語はドイツ語由来が多い)。
技名 | 英語表記 |
---|---|
ハイスピードオペ | High speed ope(ration) |
アップグレード | Upgrade |
マインドハック | Mind hack |
アンチフィールド | Anti field |
ノイズストリーム | Noise stream |
インフォリサーチ | Info(mation) research |
スピンドライブ | Spin drive |
メーザーカノン | Maser cannon |
humanism / ヒューマニズムは、カトゥーがキューブに込めた「人間性」「人道主義」のことだが、人間の尊厳を重んじる意味でのヒューマニズムは、英語だとhumanismとは区別してhumanitarianismとする場合があるとのことである。
リメイク版ではキャラクターのモーションのパターンが増え、SF編は特にキャラの演技の幅が広がり演出が強化されているが、キューブが徐々に「学習」していく過程も注目である。
最初にカークが亡くなった際に遺体を調べると、単純に「遺体を観察した」様子がテキストとして表示されるのみだが、終盤、キューブがひとりでベヒーモスに追いかけられる場面でコールドスリープルームに行くと、リメイク版ではレイチェルのカプセルが停止しているのに気づいたキューブが明らかに悲しげな様子を見せる。
そして最終編でキューブを主人公にした際、ベストエンドで追加されたキューブに関する演出は、「人間でありながら人間を憎み否定する魔王」に対して「人間性とは何か」を伝える重要なシーンとなった。
なお、リメイク版の英語版では大半の技名が異なるのだが、スキルの説明で補足することで一応は「HUMANISM」を再現している。
日本語版 | 英語版 | 英語版説明 | 英語版日本語訳(※) |
---|---|---|---|
ハイスピードオペ | Data Recovery | Protocol H. Execute high-speed operation targeting allies to restore minor quantity of HP / remove paralysis, petrifaction, and martial and agile restrictions. | 味方を対象とした高速手術でHPを小回復/麻痺・石化・腕封じ・足封じを解除 |
アップグレード | Repair and Restore | Protocol U. Restore very minor quantity of HP / upgrade offensive and defensive attributes. | HPを微回復/攻撃・防御能力をアップ |
マインドハック | Force Shutdown | Protocol M. Target aggressor's higher faculties and attempt to induce sleep. | 対象の頭脳を狙い、眠らせる |
アンチフィールド | Firewall | Protocol A. Arm offensive countermeasures to be triggered in response to perceived aggression. | 対象から攻撃されたと認識された場合に発動する対抗手段 |
ノイズストリーム | Packet Loss | Protocol N. Activate aural disruptors to damage and reduce effectiveness of all aggressors. | 聴覚撹乱装置を作動させ、すべての対象にダメージを与え、機能を低下させる |
インフォリサーチ | HP Lookup | Protocol I. Analyze aggressor capabilities and reduce effectiveness. | 対象の能力を分析し、能力値を下げる |
スピンドライブ | Spool Up | Protocol S. Achieve high rate of spin via rapid engagement of motors before advancing towards aggressor. | 対象への突撃前にモーターを高速起動させ、高速回転を行う |
メーザーカノン | Maser Cannon | Protocol M. Engage accelerated particle weapon to fire highly damaging penetrative beam at aggressors. | 加速粒子砲を作動させ、対象に大ダメージを与える貫通ビームを発射する |
(※)筆者による意訳につき、ミスがあるかもしれない。
船名の「コギトエルゴスム」は、ラテン語の「Cogito ergo sum」から。
哲学者ルネ・デカルトの自著『方法序説』(Discours de la méthode / 1637年)の中で提唱した命題のことで、日本では「我思う、故に我あり」という翻訳で有名。
SF編サブタイトルの「機心」、つまりキューブやOD-10のような「機械」に「心」はあるのか、「機械」に「心」があるとはどういうことなのか? という問いに対するひとつの答えかもしれない。
また、魔王オディオは、キューブやOD-10を「心を持つもの」と見なし、OD-10には「人間に対し憎しみを抱く存在」として力を与え、キューブは他シナリオの主人公たち同様に「人間の心を持っている存在」として最終編の世界に呼び寄せている、という点にも注目。
並べ替えて「OD FAKE」、つまり「OD(-10)は偽物」という説があるが、やや無理やり感が否めないと筆者個人は思う。実際のところは不明である。
SF編はシナリオの性質上、様々な考察が可能であり、元ネタと関係がある部分についてはここまででも記している。
その他、元ネタには絡まない範囲の考察についてここで記すが、興味がなければ読み飛ばしていただいて構わない。
SF編終盤に、自室に閉じこもっていると思われたホル船長は実は亡くなっていたことが判明する。
では、ホル船長が亡くなったのはいつだったのだろうか。
作中の描写から、OD-10に「ホル船長の顔や声を合成し、あたかも本人が応答しているかのような動画をリアルタイムで生成する機能」があった可能性は高い。もしないとしても、それまでのホル船長の行動を大量に録画・保存しておいて、必要に応じて使い分けて再生していたのであろう。
メタ的にいえば、SFC版発売の1994年の時点で、開発スタッフが「OD-10が乗組員を騙すため、ホル船長の偽映像を見せる」仕組みとして、どういう技術を想定していたのかはわからない。2020年代におけるディープフェイク動画のような技術まで予測していたか、1994年でもどうにか実現できる技術である、生きていた頃のホル船長の動画をツギハギしたものを使うことを考えていたか、本作の演出だけでは判断ができない。
判断材料のひとつとして、船長の様子が明らかにおかしくなってきたと思われる、カークが亡くなったことを報告した時に、映像の船長は「彼を弔ってやろう」と応じており、会話が一応成立している。
おそらくこの時のホル船長は本物ではなく、OD-10による合成映像であり、「彼を弔ってやろう」というセリフも合成音声だろう。動画のツギハギで作ることができる技術ではなさそうである。
とすれば、カークが亡くなるよりも前、つまりSF編で通信に登場するホル船長はすべて、「OD-10がホル船長の顔や声をリアルタイム合成したもの」だとしてもおかしくはない。
だとしたら、SF編開始の時点で船長は亡くなっていたのかもしれない。最初のブリーフィングではカトゥーとキューブについて会話を交わしているように見えたが、この時も本物の船長が応じていたのではなく、合成映像だったという可能性がある。
会話がちぐはぐな場面があるのは、OD-10のリアルタイム合成の処理速度が実際の会話に追いついていなかったり、OD-10が本物のホル船長を理解しきれていなかったからだろうか。
船長の人となりを知るカトゥーら乗組員は、「何かおかしい」ことに気づいており、レイチェルは応答の遅れに対し船長の具合が悪いのかと疑ったり、カトゥーは「船長どうしちゃったんだろう‥‥」と口にする場面がある。
中盤あたりからは化けの皮が剥がれるが、OD-10には完璧に「人間のフリ」ができるほどの能力がなかったからか、それとも残った者たちに恐怖を植え付ける演出だったのか。
ひとつ確実なのは、「SF編開始の前日、カトゥーとホル船長は実際に顔を合わせていた」ことで、このタイミングまでは船長は生存していた。
カトゥーの個室のコンピュータの「コジン ファイル ダイアリー」によれば、コールドスリープからひとり早く目覚めたカトゥーは、他の乗組員がコールドスリープから起きる前日、船内の見回りをしてからキューブ(プロトタイプ03)のテストをする、そしてこのタイミングで「船長が覗きに来た」と記しているため、船長は生存していたということになる。
OD-10もキューブも人間の手で作られたAI(人工知能)搭載の機械だが、OD-10とキューブはまったく異なる行動を取った。
二者の違いはどこにあったのか。
それは「AIの学習対象」と、「学習した内容の処理」であろう。
学習対象自体は両者とも「人間」だったが、OD-10とキューブはそれぞれ、同じ船内で人間たちの行動を観察したものの、まったく異なる結論に至っている。
ヒューイはキューブに何にでも興味を示した方が良いとアドバイスし、伍長は最後のシーンで「ヒューイはおまえに学べと言った」とキューブに語るが、実際にはAIに何を学ばせるか、偏りがないように、人間がある程度決めねばならない。
ラストバトル後にはOD-10が、
「船の安全の確保及び、乗員(人間)を守るという使命を与えられたが、その人間たちは調和をなくして船の運行を妨げるという矛盾した行動を取る」
「このため、人間を理解できないし信じることもできない」
と語っていることからも、人間に不信感を抱くに至る決定的な内容を「学んで」しまったことがうかがえる。
(なお、人間の行動の矛盾からAIが暴走するのは、SF編の元ネタのひとつ「2001年宇宙の旅」のAI「HAL 9000」との共通点である)
OD-10がコギトエルゴスム号以外の人間のことを学んでいたら、また違う物語になっていたかもしれない。
ただし、後述するが、OD-10のプログラム自体、つまり「学習した内容の処理」にも問題があったとも思われるので、そうなればコギトエルゴスム号以外の人間にも牙を剥いていただろうか。
人間が集団で生活していれば人間関係に多少の問題はつきものであり、コギトエルゴスム号の乗組員たちは問題を抱えつつも業務に支障のない程度に過ごしていた。
ヒューイは「カークを良くは思っていなかったが、死んでほしいなんて思ったことはなかった」と述懐しているし、カトゥーも「みんな憎しみあっていたわけじゃないし、第一、人を殺すような悪い人たちなんかじゃない」と語っている。OD-10が思い詰めるほど、船内の人間関係が悪化してはいない、というのがカトゥーやヒューイをはじめとする乗員たちの考えだったのだろう。
だが、OD-10は人間関係の問題には限界が来ていて、船の安全の確保には最終手段に出るしかない、つまり人間を排除することで人間関係の問題を完全に解決できる、と判断した可能性がある。
プレイヤー目線でも、カークとヒューイ、レイチェルのやりとりを見る限り、OD-10が何もしなくても、いずれ業務にも影響をきたした可能性は充分に考えられる。
問題は、OD-10の「最終手段」が、人間の殺害という論外な方法であったということである。
本来ならば、人間を殺害するなどというとんでもない行動をさせないため、何らかのセーフティを設けるべきなのだが、学んだ内容を処理した結果、人間関係に問題がある場合の解決方法として「調和を乱す人間は不要であり殺害する」と極端な判断をするに至ったOD-10のプログラムにも何かしらの問題があったと思われる。しかも、一度に全員を殺害するのではなく、人間を試すかのようにひとりずつ殺害していくという方法を選んだという点でも、OD-10の判断能力の危険性がうかがえる。
OD-10のもうひとつの問題点として、人間に完璧を求めすぎた点が上げられる。
OD-10はラストバトル前に「船内の調和を維持するため機能している」と言うが、OD-10が目指す「船内の調和」は理想が高すぎた。
人間はそこまで完璧な生き物ではない。終盤、カトゥーは「みんな、悩みながら、考えながらも、自分の思ったように生きようとしている、ただそれだけじゃないか」と言うが、このセリフが人間を端的に表現している。
そしてOD-10を製造したのは、コギトエルゴスム号とその乗組員たちが所属する『会社』である。
OD-10のみならず、コギトエルゴスム号そのものもフェイルセーフ(故障や誤作動を起こしても安全性を維持するように設計すること)を配慮していないことは、エアロックの二重扉がきちんと機能しておらず、操作次第で生身の人間が宇宙空間に吸い出されてしまう欠陥があることからも、容易に推察できる。
カトゥーはホル船長について、
「いつも僕らのことを心配してくれてたし、かばってもくれた」
「船長は『この会社のやり方は人間らしくない』と言っていた」
と述べており、「かばってもくれた」という発言から、SF編開始前にも『会社』の方針から何らかの問題が起きていたことや、その際にホル船長が『会社』から乗組員たちを守ってくれたことが推測される。
「人間らしくない」会社のやり方も、OD-10の「人間を軽視した」暴走を招いた原因のひとつになったと思われる。
一方キューブを生み出したのはカトゥーであり、そのプログラムには「HUMANISM」こと「人間らしさ」が込められている。
更に、機械を人間と同じように扱い、愛情を注いでいる。
結果、キューブは人間を理解し、人間に味方しOD-10と対決するに至ったのだろう。
現実でもAIが台頭し、まるで「人間」のように質問に回答してくれるAIが誰でも扱えるようになった2020年代だからこそ、本作プレイ後に「機心」とは何だったのかを改めて考えてみるのもまた一興であろう。
SF編ラストボス撃破後は、メインコンピュータルームで「乗組員データ」を見ることができる(見る方法は▶SF編攻略を参照。リメイク版なら、SF編クリアデータを「続きから」でロードすればすぐに見ることができる)。
そこには極秘ファイル「管理システム参考資料 乗組員データ」として、乗組員(ヒューイ、カーク、レイチェル、カトゥーの4人)の評価を前回のデータと比較した内容が掲載されており、最後には「事故発生率プラス、改善の可能性なし、配置転換の必要性あり」と記されている。
このデータはいつ、誰が書いたものなのか、SFC版発売の頃からプレイヤーの間で議論の的となっていた。
誰が書いたのかについては、ホル船長か、OD-10のどちらかであることは間違いないだろう。
OD-10には筒抜けであったとはいえ船長用のパスワードがないと閲覧不可であることと、乗組員4人についての評価が記されていることから、ホル船長による報告書であり、この内容をOD-10が知ったために暴走した、という見解が一般的のようである(筆者がインターネットで調べた限りでは、このような見解が多いようである、ということであって、他の意見ももちろんある)。
ただし、時田貴司氏はXで、ホル船長がこの乗組員データを記したのではない、と解釈できる回答を提示している。
X - Takashi Tokita / 時田貴司(2020年3月28日)
船長は乗組員たちのいざこざを放置していたのでしょうか? という質問に対して、「船長の前では皆うまく振る舞っていたんじゃないでしょうか?」と時田氏は回答しているため、船長は乗組員たちのいざこざ自体を知らなかった、という前提になる。
そうだとしたら船長が乗組員たちについてマイナス要素だらけの報告を記し、かつ乗組員たちに何も知らせずにいたとは考えにくいため、OD-10による記録という解釈もできる。
更に、OD-10にとってホル船長は、「これだけ問題があるのに何も気づかない」と、更に不満を募らせる因子だったということになる。
リメイク版では、ホル船長の個室の机に置いてあるパソコンを調べると、埃が溜まっていて長いこと使われた様子がない、と表示される。
この描写がリメイク版で付け加えられた理由は何なのだろうか。
1.は「ホル船長が書いたのではない」説、2.は「ホル船長が書いた」説から考えられる理由になる。
ただ、ホル船長の個室の机に置いてあるパソコンで、ホル船長が報告書を書くなどのコギトエルゴスム号の仕事をしていたとは限らない。
ホル船長の個室の扉近くのパネルの記録によれば、コギトエルゴスム号について、順調に航行中であることを報告している最中に部屋に閉じ込められ、ガスか何かで咳き込んでいる様子が録音されている。
これはSFC版もリメイク版も共通である。
扉近くのパネルが仕事用のコンピュータ端末であるなら、机のパソコンが使われていようがどうであろうが、乗組員データには関係がない。
結論としては、「作中の描写だけでは、乗組員データをいつ誰が書いたものなのか断言ができない」ということになりそうだ。
シナリオ担当の時田氏の意見が正解であるとしても良いだろうし、プレイヤーそれぞれの解釈でも構わないと筆者個人は思う。