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元ネタ&雑学 > 最終編

元ネタ&雑学のトップページをお読みの上で、以下を御覧ください。
※このページには、リメイク版に関する重大なネタバレが含まれます。

オルステッドを主人公に選ぶか、オルステッド以外を主人公に選ぶかで最初に大きな分岐がある最終編だが、オルステッド以外を選んだ場合、各シナリオの7人の主人公たちのシナリオ開始地点、各キャラに対応したダンジョン、最強武器については様々な考察の余地があるだろう。
例えばサンダウンのシナリオ開始地点がハッシュの山小屋横であるのは、サンダウンとハッシュの境遇に類似点があるからであろうし、近未来編でテレポートに失敗するとちびっこハウス内の水に関係のある場所に飛ばされていたアキラは、最終編だと水の描写が印象的な心のダンジョンにテレポートで飛ぶ。おーでぃーおーをはじめとする恐竜はSFC版発売の1994年の時点でも「隕石の落下によって寒冷期がおとずれて絶滅した」という説があったが、ポゴの最強武器がある本能のダンジョンは氷で覆われた寒冷の地である。
また、最終編のBGMのほとんどに、これまでのシナリオのBGMのモチーフが取り入れられている。
バトル曲にタイトル曲の「LIVE・A・LIVE」が用いられている一方、フィールド曲の「絶望の都」は「LIVE・A・LIVE」がモチーフになっている。
オディオ戦のBGM「ILLUSION…」や、ピュアオディオ戦ではBGM「PURE ODIO」の中に、「魔王オディオ」「届かぬ翼」のフレーズの一部が含まれていることにも注目。
そしてリメイク版追加の「GIGALOMANIA」は、「MEGALOMANIA」と「届かぬ翼」がモチーフとして用いられている。
様々な視点から最終編を再プレイしてみるのも面白いだろう。

モンスターの名称

ファンからの15の質問に開発陣が回答した26周年記念生放送をリポート | ファミ通.com(2020.10.04)

モンスターの名称の元ネタのうち、いくつかは上のリポートのQ11で回答が示されているので参照していただきたい。
また、同じスクウェアのRPGに登場している名称も数多い。
メカサタケ98については近未来編解説を、グラシャラボラスについては、中世編解説を参照。

スプライト (映像技術) - Wikipedia

最終編には、これまでのシナリオに登場した敵・モンスターと見た目(ドット絵)が同じである敵・モンスターが多数登場する。
ファミコンやスーパーファミコンのゲームでは、容量節約という意味も込めて、同じ見た目でも色を変更して別モンスターとしていたことがよくあった。
ハードの性能が進化して、それまでのように容量にあまり気を使う必要がなくなってきても、色違いで見た目は似ている敵はしばしば登場するが、これは従来通りに容量削減の意味もあるし、加えて世界観の演出や、「似たような見た目の敵なので、これまでの戦闘での対処法を試してみる」という攻略上のヒントを兼ねたり、開発コストの低減を狙うなどの目的がある。
本作の場合は、これまでのシナリオに登場した敵を色替えして登場させることで、魔王オディオが作り出した混沌の世界に迷い込んだという演出の一環にもなっているのだろう。
技術的なことを知りたい場合は「スプライト」「カラーパレット(またはインデックスカラー)」などで調べてみると良い。

ザビエール

フランシスコ・ザビエル - Wikipedia

名前は日本にキリスト教を伝えた宣教師フランシスコ・ザビエル(1506年~1552年)からであろう。

オイディプス・ダイダロス・ポリディクティス

ギリシア神話の登場人物オイディプース、ダイダロス、ポリュデクテースから。
名前が元ネタになったのみの模様。
むしろ見た目は水戸黄門・助さん・格さんっぽい時代劇トリオの名前がどうしてギリシア神話になったのかが謎。
こういった点もまた、最終編の混沌さを表しているのかもしれない。

ポウンバード

「Pawn Bird」だとしたら、「Pawn」はチェスの駒「ポーン」からか。歩兵を意味し、将棋でいえば「歩」に近い役割。
リメイク版収録の英語版では「Pawn Bird」なので、やはりチェスの駒の「ポーン」が由来のようである。

ヌーベルルミエル

フランス語で「nouvelle lumière」だと「新たな光」という意味になるが、鳥の見た目でメーザー砲を撃つことを意味しているのかどうかはわからない。

ソウルイーター

そのまま英語で「Soul Eater」、つまり「魂を食べるもの」。使う技も「吸血」と名称に合っている。
ソウルイーターのみならず、最終編の敵は英語だとそのままな意味の敵も含まれ、リメイク版収録の英語版でもそのままなことがほとんどである。
上のポウンバードも該当するし、ルビータイラントは「Ruby Tyrant(ルビーの暴君)」だし、ホラーシップは「Horror Ship(恐怖の船)」である。

ベアナックル

ベアナックル・ボクシング - Wikipedia

単純に見た目から、bear(熊) + knuckle(げんこつ)、または素手で対戦する格闘技「ベアナックル」が由来か。
どちらもかかっている可能性もある。
(格闘技のベアナックルはBare-knuckleであり、熊のbearとは綴りが異なる)
本作のベアナックルは(見た目が熊だけに)素手で戦うが、「虎の小手」を落とす。

猫又

そのまま、妖怪「猫又」から。
「油舐め」という技を使うが、こちらは妖怪「化け猫」が行灯の油を舐めるという逸話から。
「猫又」と「化け猫」はどちらも猫の妖怪だが別種らしい。
見た目が同一の幕末編のおミケも「猫又」または「化け猫」が由来だろう。

ブラキオペルタ

「ブラキオ」は恐竜の「ブラキオサウルス」の命名と同じくラテン語の「腕」のことか。
「ペルタ」を「pelta」とするとラテン語で「盾」の意味。古代ギリシア時代の軽装歩兵ペルタストが持っていた三日月型の盾を「ペルタ」と呼んだ。
ブラキオペルタは腕が4本で、そのうち2本は盾かどうかは不明だが何かしらを手にしており、これを「盾」とみなせばだいたい見た目通りのネーミングということになる。

エントモパイラム

ピルム - Wikipedia

「エントモ」の部分が中世編の「エントモフォビア」と同じ由来であるとすれば「昆虫」の意味。
「パイラム」は古代ローマ兵が使用した投槍「pilum」からか。英語読みだと「パイラム」。
ブラキオペルタとエントモパイラムがパーティで出現することからしても、古代の武器由来の可能性は高そうではある。

バーバリアン

バーバリアン - Wikipedia

Barbarian(バーバリアン)で「未開人」「蛮族」などの意味。
RPGでは敵として登場すること以外に、味方キャラのジョブやクラスなどとしても設定されることがある。
本作はプロレスが元ネタになることが多いが、「ザ・バーバリアン」というリングネームのプロレスラー、シオネ・ヴァイラヒ氏もおり、そのあたりが元ネタになった可能性も一応は考えられる。

イシュタール

イシュタル - Wikipedia

古代メソポタミアの愛と美の女神イシュタルから。戦の女神の側面もあったらしい。
イシュタルは古バビロニア人からも信仰されていたが、本作におけるブリキ大王とは特に関係ない。

使用技の「エッシャー空間」は、錯視・だまし絵で有名なマウリッツ・エッシャー氏から取られたと思われる。
「メビウスロンド」は「メビウスの輪」という裏も表もない図形が元ネタか。
つまりどちらの技も、幾何学的な図形のネタから取られていると考えて良いようである。
本作のイシュタールの見た目も、下半身のヘビのような部分がだまし絵のような妙な立体構造になっている。尾の先がもう一方に噛みついているような造形は、メビウスの輪っぽくも、ウロボロスの輪っぽくもある。

ツナヨシ

徳川綱吉 - Wikipedia

おイヌ様と一緒に出現することから、「生類憐れみの令」で動物などの保護の命令を出した江戸幕府の第5代将軍、徳川綱吉(1646年~1709年)が元ネタだろう。

ケルベロ

フランスの文筆家コラン・ド・プランシーによって書かれた悪魔やオカルトの辞典「地獄の辞典(Dictionnaire infernal)」に掲載された3つの犬の頭を持つ悪魔「Cerbere」が元ネタか。
ギリシア神話に登場する犬の怪物ケルベロスと同一とされたりされなかったりするらしい。

ケルベロス - Wikipedia

ケルベロスは、ファンタジー系RPGでは敵としてでも魔法・技系のネーミングでもおなじみ。

大顔面

向きにより異なる感情の顔を持つ、という点においては「ファイナルファンタジーIV」の幻獣アスラに似ている。ただしFF4のアスラは三つの顔を持つ。
なおアスラはインド神話が元ネタで、仏教に取り込まれた際には阿修羅という名称となっており、FF4のアスラの見た目も三面六臂といわれる阿修羅が元と思われる。

大顔面が使うスキル「火神カグツチ・風神シナツヒコ・水神ミズハノメ・土神ハニヤスビメ」はそれぞれ、日本神話に登場する神の名前から(原典により表記が異なる)。
4つの顔により仕様するスキルが異なるという演出を意図したのではないかと思われるが、本作では画面上の顔の向きで技を変えてくるという、FF4のアスラのような仕様はない。

  • 火の神・軻遇突智(かぐつち)
  • 風の神・志那都比古神(しなつひこのかみ)
  • 水の神・弥都波能売神(みづはのめのかみ)
  • 土の神・波邇夜須毘売神(はにやすびめのかみ)
コロコロムシ

コロコロムシは、「ロマンシング・サガ」には敵として、「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」にはエッグモンスターとして登場する。見た目も似ている。
「ロマンシング・サガ」「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」では非常に弱いのだが、本作では雑魚敵としてはかなりの強敵。
魔王オディオが敗者たるコロコロムシに本作で力を与えた……という、メタなネタかどうかはわからない。
なお、本作ではSFC版だと「ころころムシ」で、リメイク版は「ロマンシング・サガ」「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」と同じすべてカタカナの「コロコロムシ」。

ピスタチオ

ピスタチオ - Wikipedia

緑色のナッツの一種「ピスタチオ」が、モンスターのピスタチオの由来と思われる。
通常、殻付きで販売されているが、この殻が本作のピスタチオの防御の高さの元ネタになるのだろうか。

また、「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」にも「ピスタチオ」という将軍が登場する。
もっとも、「半熟英雄」では、将軍たちの名前の由来のひとつがナッツ類で、他にも「マカデミア」「カシュー」がいたりもする。

マスタードラゴン

英語でそのまま「Master Dragon」の意味合いであれば、戦闘でLEADERとして出現すること、そしてステータスの高さを表した名称と思われるが、見た目がSF編のエレ・ミラージュや上のピスタチオと同じなので、「ドラゴン」という言葉から一般的に想像できる姿とはかけ離れている。
姿がファンタジー系ドラゴンではないのは、使用技に「ジョムジョム弾」が含まれるため、ファンタジー系のドラゴンではなく、マシン系のドラゴンだからかもしれない(スクウェアのRPGでは、ファイナルファンタジーの4作目に「機械竜」など、マシン系のドラゴンの敵が登場する)。

「マスタードラゴン」といえば、日本のRPGで比較的有名なのは「ドラゴンクエスト」4作目~6作目に登場するマスタードラゴンであるが、中世編解説でも触れた通り、本作には「ドラゴンクエストIV」の影響があるため、「マスタードラゴン」もまた元ネタとされた可能性が一応はある。

もうひとつの可能性として、リメイク版収録の英語版について説明する。
リメイク版収録の英語版だと「Mustard Dragon」であり、「Master Dragon」ではない。
「Mustard」は香辛料のマスタードのことであり、カラシナの種子から作る。
「ピスタチオ」がナッツ(種)であることから、こちらも食べられる「種」つながりで「マスタード・ドラゴン」という命名であろうか。
もしかすると日本語版も同じ理由での命名で、「マスタードドラゴン」ではSFC版における最大8文字の文字数制限に引っ掛かるため、言葉遊び要素も含めて、「ド」をひとつ抜いた「マスタードラゴン」だった、という可能性もある。

次元 源左衛門

次元大介 - Wikipedia

幕末編に五エ門がいたので、ルパン三世繋がりで「次元」大介から、という説がある。
ドロップアイテムに源氏シリーズ及び「テキーラ」(リメイク版では「気付け薬」)が設定されており、洋酒(ただし次元が好んで呑むのはバーボン・ウイスキー)を呑むシーンがしばしば登場する次元っぽさもある。

使用技の「次元空裂断」(デスプロフェットも使用)を先に命名してから「次元 源左衛門」を作ったのか、その逆かはわからない。

源左衛門(げんざえもん)」自体は、歴史上名を残した人物が何人か存在している。
「いざ鎌倉」の元ネタとして知られる能の一曲「鉢木」の登場人物・佐野源左衛門常世が有名か。
また、現在でも地名や店名などに「源左衛門」が使われている例もある。
ただし「次元 源左衛門」の「源左衛門」が何を元ネタとしたのかはわからない。源氏シリーズをドロップすることから「源」が付く名前にした、という可能性もある。

リンバースキュラ

スキュラ - Wikipedia

リンバーは英語の「limber(しなやかな)」、スキュラをギリシア神話に登場する怪物スキュラが元ネタだろうか。
スキュラは上半身は女性で、下半身は魚または犬の姿をしており、リンバースキュラの見た目とも合致する。
また、スキュラは「ファイナルファンタジーIII」などでも敵キャラとして出現する。

バロクレスト

baro(ギリシャ語の「重さ、圧力」)とcrest(英語の「山頂、極致、絶頂」)からか。
「暗黒球体」「魔力吸引」など、重さや重力を思わせる技を使用してくるあたりが「baro」の由来かもしれない。

ポワッシー

リメイク版収録の英語版では「Hygrophilia」という名称で、Hygrophiliaは性的倒錯(性的倒錯 - Wikipedia※閲覧注意。リンク先トップの注意事項に目を通してください)の一種、「分泌物性愛」のことである。
ここから察するに日本語版の「ポワッシー」の由来もそういう方向の可能性があるし、実際にインターネット上ではそういう噂話もちらほらあるのだが、デリケートな話題のためここでは取り上げない。そういう話が苦手な方はこれ以上調べない方が良いだろうし、問題ないという方はご自身で調べてみていただきたい。
※ご自身の健康問題については、専門の医療機関に相談してください。

ヘリオスハウント

ヘーリオス - Wikipedia

ヘリオスはギリシア神話の太陽神ヘリオスから、ハウントは英語のhaunt(幽霊)からか。

ワールダーク

ワールは英語のwhirl(渦)、ダークはdark(闇)からか。
また、「ファイナルファンタジーIV」には「ワール」という敵の反撃技があり、渦っぽいエフェクトが出る。使用するのはラストダンジョンのボス・タイダリアサンとラストボスのゼロムスであり、ワールダーク同様強敵。

アポフィスフィオ

アペプ - Wikipedia

エジプト神話における悪の化身「アペプ」のラテン語読み「アポフィス(Apophis)」が由来か。
アペプは大蛇の姿をしているといわれるが、本作のアポフィスフィオは赤い大蛇に人型モンスターがまたがっている姿。赤い大蛇部分がアペプ由来なのかもしれない(ウツボのように見えなくもないが)。

リメイク版収録の英語版だと「Apophisphilo」。Apophisにphiloがついているが、「philo-」という接頭辞だと「愛する、好む、傾向がある」のような意味合い。「philosopher」で哲学者、「philosophy」で哲学のこと。

ユラウクス

開発元・株式会社スクウェア(SFC版当時)の綴り「Square」を逆にした「Erauqs」が由来、と26周年記念生放送で回答があった。

リメイク版収録の英語版では「Euraokos」で、「Erauqs」ではないのだが、「Euraokos」だと日本語版の「ユラウクス」に比較的近い発音になる。

ジャギィイエッグ

26周年記念生放送での回答によると、「階段状のギザギザを指すジャギーから」。

ボイスハート

トミー・ボイス&ボビー・ハート - Wikipedia

アメリカの歌手「トミー・ボイス&ボビー・ハート」が名前の由来であると、井上信行氏(原始編・近未来編シナリオを担当)から明らかにされている。
漫画「北斗の拳」に登場するハート(ビジュアル面及び、テレビアニメ版では喋り方が女性的)を想像する方もいるかもしれないが、開発側で意識していたのかどうかは不明。なお喋り方についてはリメイク版で変更されたが、おそらくコンプライアンス的な配慮からであろう。

デスプロフェット

death(死) + prophet(予言者)と、英語での意味そのままと思われる。
本人も「死の予兆」と名乗っている。

ヘッドプラッカー

「プラッカー」を英語のplucker、動詞「pluck(引き抜く)」に接尾辞「-er」がついた形とすれば、
head(頭) + plucker(引き抜く者)
と、なかなか物騒な意味になる。
リメイク版収録の英語版では「Headhunter」(首狩り族)であり、やはり物騒である。

ヘッドプラッカーと魔王像の関係性の噂については、このページの下の「おまけ 噂話あれこれ」に掲載しているので参照のこと。

アムルクレチア

「ルクレチア」の前に「アム」を付けた名称なのだが、この「アム」が何を意味するのかははっきりしないし、調べた限り公式での発表もないようである。
ニシキゴイの野生種「アムールコイ(Amur carp)」(なお、ユーラシア大陸北東部を流れる「アムール川」に生息していることが名前の由来)や、面白ネタならダジャレ的な「I am ルクレチア」も考えられるが、少し真面目に考えてみると「ニミズ」から取った可能性もある。
アムルクレチアに勝つと聞ける会話によれば、アムルクレチアは自身を「このルクレチアの歴史より長い大鯉」「木でも長生きすると神様みたいになるのと同じ」と説明している。
日本では「八百万の神」といって、どんなものにも神がいるという考え方がある(生物だけではなく無機物、道具なども含む)。アムルクレチアの言う「木の神」は、いわゆる御神木のことを指しているのだろう。
神木 - Wikipedia
また、「八百万の神」と似た考え方は日本以外にもあり、研究者により「アニミズム(animism)」と呼ばれている。
アニミズム - Wikipedia
また、「長生きした生物が神のような存在になる」伝承も世界各地にある。日本なら長生きした猫が妖怪「猫又」に化ける話が有名であり(先に記した通り、本作では雑魚敵として出現)、生物ではなくても長く使った道具が神となる「付喪神」の話もある。これらはどちらかといえば、神がどうこうというより、妖怪伝承ということになるだろう。

アムルクレチアの設定が「八百万の神」や「アニミズム」を下敷きとしているのはほぼ間違いないだろうが、「アム」部分の由来かと言われるとかなりこじつけ感もあるので、そういう程度に考えていただきたい。

リメイク版収録の英語版だとアムルクレチアは「Lucretius」となっている。
中世編解説で紹介したとおり、ルクレチア王国の「ルクレチア」は一般的なヨーロッパ系の女性名なのだが、イタリア語綴りの「Lucrezia」は、古代ローマの人名(男性名)「Lucretius」の女性形にあたる。
英語版だと「Lucretius」を元として「the Kingdom of Lucrece」が命名されたという方がしっくりくるかもしれない。
そして英語版では「アム」の影も形もなく、やはり「アム」の由来はわからない。

人面魚 - Wikipedia

名前とは関係ないが、「喋る金色の鯉」という意味では、善宝寺(山形県鶴岡市)の金色のニシキゴイが「正面やや上方からだと人間の顔っぽく見える」ことから起きた、1990年の人面魚ブームも背景にありそうである。

余談になるが、SFC版におけるアムルクレチアの関西弁は、作曲の下村陽子氏が兵庫県出身のため、下村氏がチェックしたとのことである。

パロム&ポロム

本能のダンジョンでワタナベ親子が左右に両手をついて石化しているが、「ファイナルファンタジーIV」の登場人物、双子のパロム&ポロムは、あるシーンで左右から迫りくる壁を止めるため、壁に両手をつけて自ら石化することで壁の移動を止めた。
ポーズや石化していることが本能のダンジョンのワタナベ親子と似てはいるのだが、元ネタかどうかといわれるとやや微妙なところ。
ただし本作は、SFC版ディレクター時田貴司氏が手掛けた「ファイナルファンタジーIV」からのネタが比較的多いので、ありえなくはない。

最強武器

7キャラ分用意されている最強武器だが、アキラの「ド根性グラブ」や高原の「最強バンテージ」はそれぞれを象徴する言葉からだろう。
心山拳師範の「達人のヌンチャク」は、功夫編解説でも触れた通り、ブルース・リーが得意としたヌンチャクからと思われる。
ポゴの「ブリバリ骨オノ」はポゴらしく擬音からか。本能のダンジョンでは肉の匂いを追いかけていくと見つかることから、システム面でもポゴの特徴を捉えた「(元は狩りの獲物の)骨のオノ」なのだと思われる。

その他についてはおそらく元ネタがあるため、以下で説明する。

村雨 / ムラサメ

曲亭馬琴による江戸時代の小説「南総里見八犬伝」(1814年刊行開始、1842年完結)に登場する架空の刀が「村雨」。
本作ではおぼろ丸の最強武器に設定されている。SFC版では「ムラサメ」、リメイク版では「村雨」表記。
リメイク版では「露で濡れた刀。斬った血を即時に洗い流す」という説明があるが、これは「南総里見八犬伝」の「村雨」の特徴ほぼそのままである(小説では「抜いた時に露を発生させる」)。
「村雨」が置いてある鍵のダンジョン内は、最奥の部屋をはじめ、水が流れる水路が豊富であることも、「村雨」の特徴を反映した結果であると思われる。

「村雨」は、ファイナルファンタジーシリーズをはじめ、日本のゲームにも頻繁に登場する。
幕末編に登場した刀がすべて実在の日本刀を元ネタとしているのに対して、最終編のみ架空の刀が登場し最強の刀と設定されていることも、最終編という世界の異質さを演出する一要素かもしれない。

SFC版では「ムラサメ」に眠りの追加効果が付いているが、「南総里見八犬伝」の「村雨」には眠りに関する設定はないので、なぜこのような設定がなされたのか不明。
ファイナルファンタジーシリーズなどでも、「村雨」に眠りの追加効果がついていることはなく、本作独自の設定と思われる。
(SFC版攻略本には、「ムラサメ」に毒の追加効果がある、と間違った内容が記されている。しかもNTT出版・小学館どちらの攻略本にも同じミスがあるので、ゲーム開発中は毒の追加効果が設定されていて、それら資料を元に各社から攻略本が作られたのだろうか。詳細は不明であるが、いずれにしても、「南総里見八犬伝」の「村雨」には毒に関する設定も存在しない)

四神 - Wikipedia

なお、鍵のダンジョンの4つの鍵「白虎の鍵」「青竜の鍵」「玄武の鍵」「朱雀の鍵」の元ネタは、中国の神話・四神。日本では様々なサブカルチャーでもおなじみ。
リメイク版では各鍵に対応した色が設定されたが、こちらも四神に対応した色が元ネタ。
ただし、四神では「白虎:白、青竜:緑または青、玄武:黒、朱雀:赤」に対し、本作は玄武の鍵が緑色に対応している。
リメイク版では、鍵の色に対応して水路に光が走ったり、柱が光ったりするため、黒色だとわかりにくくなることから変更したのかもしれない。

44マグナム

サンダウンの最強装備の「銃」だが、44マグナム自体は「銃弾」のことである。
「S&W M29(Smith&Wesson Model.29)」という拳銃向けの銃弾が「.44マグナム弾」であるが、1971年の映画「ダーティーハリー」で「.44マグナム弾」のリボルバー銃が一躍有名になり、「.44マグナム弾」という言葉が独り歩きした結果、「44マグナム」自体を銃の名前のように扱うことが増えた、という経緯のようである。
「S&W M29」の「29」が、本作の「44マグナム」の攻撃の値であることは偶然ではないだろうから、本作スタッフも「44マグナム」自体は銃弾だと認識した上で、映画「ダーティーハリー」などを元ネタに武器名とした可能性が高い。
また、スクウェアのゲームでは、ゲームボーイのSa・Gaシリーズで「44マグナム」が武器(銃)として本作より先に登場している。

17ダイオード

大鉄人17 - Wikipedia

1977年の特撮テレビ番組「大鉄人17」に登場するロボット「大鉄人ワンセブン」は、「オートダイオード・ワンセブン」を内蔵しているが、「17ダイオード」はここからの命名である可能性が高い。
また「大鉄人17」は「自我をもったコンピュータが人類を有害と考え、人類を滅ぼすためワンセブンを生み出したが、ワンセブンは逆に人類の味方をする」という、SF編に通じるテーマも見いだせる内容となっている。

「17ダイオード」がある知のダンジョンは、アメリカのテレビドラマ「ツイン・ピークス」(1990年~放送、日本では1991年に衛星放送のWOWOWで、1992年に地上波で放送)内の「赤い部屋」っぽくも見えるが、元ネタかどうかは不明。

装備品

上で述べた最強武器以外、最終編のみの装備品について、特筆すべきものを紹介しておく。
ルクレチア城と魔王山は、中世編と最終編では同じ場所でも異なるアイテムに変化している宝箱などがあるが、どれが何のアイテムに変わっているかも、様々な考察ができるだろう。

血の魔装 / 銀の聖装 / 金の死装

「●の●装」シリーズ。
最終編のみの装備で名前も揃っているので、何かしらの元ネタがあるかもしれないが、筆者が調べた限りでは不明であった。
「銀の聖装」以外は名前の通りにデメリットもある装備品であり、中世編最強防具の「フレームアーマー」があった宝箱は「金の死装」に中身が変化すること、ルクレチアの民の魂が囚われている心のダンジョンで「血の魔装」が拾えることなど、魔王オディオの意思を反映した装備品にも思える。

パラサイトソード

「parasite(寄生する)」「sword(剣)」であることと、リメイク版での説明「自らの能力ダウンを犠牲に敵を切り刻む剣」から、持ち主の力を吸い取る(寄生する)ことで力を発揮する剣ということなのだろう。
魔王オディオが呼び寄せた主人公たちの中で「剣」を装備できるキャラがいない一方で、魔王オディオがかつては「剣」を装備していたこと、この「パラサイトソード」があるのはかつてのルクレチア城内(中世編では守りの剣「ディフェンダー」があった位置)と、「剣」ではないが「刀」は装備できるおぼろ丸の鍵のダンジョンであることなど、「●の●装」シリーズと同じく、色々な考察を生むのも興味深い点。

マンティスハンド

カマキリは英語で「mantis」なので、直訳だと「カマキリの手」の意味。
リメイク版のアイテムの説明も「カマキリの腕を模したガントレット」となっている。
「ウィザードリィ」には「MANTIS GLOVES(マンティスグローブ / カマキリの小手)」という防具があり、スクウェアの初期のRPGは「ウィザードリィ」シリーズからの元ネタが多いことから、「マンティスハンド」の元ネタの可能性がある。

「マンティスハンド」はエントモパイラムのドロップアイテムだが、上で説明した通り、エントモパイラムは昆虫由来の名称と思われるため、昆虫繋がりでドロップアイテムに設定されたのかもしれない。

月ウサギの足

ウサギの足 - Wikipedia

「ウサギの足」はアメリカやイギリスなどの民間伝承における縁起物、お守りとされている。毛のみ集めて飾りとすることもある。
これと、日本における「月にはウサギがいる(月の模様が餅つきをするウサギに見えることから)」という伝承を組み合わせた名称と思われる。
リメイク版では「月ウサギの足を模したふわふわチャーム」とある。

マーメイドボトム

「mermaid(人魚)」「bottom(下部)」、つまり人魚の下半身の魚の尾のような部分を示していると思われるが、SFC版ではアイテムの説明がないため、どのような足装備が想像しにくいアイテムだった。
リメイク版では「水難から身を守るマーメイドシルエットのボトム」とある。要するに魚の尾っぽい形状で下半身に纏うようなものということであろうか。結局、実物をいまいち想像しにくいことに変わりはないようである。

アメジストの盾

アメシスト - Wikipedia

名称はおそらく、ファイナルファンタジーシリーズの「クリスタルの盾」からであろう。
アメジストは紫色の水晶、つまり色付きのクリスタルのことである。
水晶は無色透明な二酸化ケイ素(SiO2)の結晶のことで、僅かな不純物の混入などにより色がつき、紫色の場合は「アメジスト」と呼ばれることになる。

「アメジストの盾」は、防御の値こそ高めの腕装備だが、他に特殊な効果がないため、「女神の小手」や原始編持ち越しの「ペシペシムチ」に比べて性能はいまいち、という立ち位置になってしまっている。
装備品の持ち込みに制限のあったSFC版では出番もあるが、リメイク版では原始編から「ペシペシムチ」をパーティ人数分持ち込むとほぼ出番なしである。
この「防御の値は高いが他に特殊な効果がない」というポジションは、ファイナルファンタジーシリーズだと「V」や「VI」での「クリスタルの盾」を彷彿とさせる。ただし「V」や「VI」だと、「クリスタルの盾」より強い盾は非売品の一品物であることがほとんどであるから、「クリスタルの盾」にも出番はある、というあたりもSFC版の「ライブ・ア・ライブ」と似ている。

黄金ちょんまげ

ジパング - Wikipedia

リメイク版のアイテムの説明では「黄金の国の戦士の証」とあり、ちょんまげといえば「日本」であることから、「黄金の国ジパング」伝承が元ネタと思われる。
(ただしこれはリメイク版での説明なので、SFC版の時点から「黄金の国ジパング」を元ネタとしていたかは不明である)
アムルクレチアがなぜ「黄金ちょんまげ」を欲しがったのかは謎。体色が黄金色、日本が舞台の幕末編の岩間さまとはドット絵が同じで色違い、といった一応の共通点はあるが……。

「黄金ちょんまげ」を拾えるのは、力のダンジョンと魔王山の2か所だが、日本人である高原日勝に対応した力のダンジョンは「日本」つながりという可能性があるものの(それならおぼろ丸やアキラでも良いのだが)、魔王山になぜ「黄金ちょんまげ」があるのかは謎。

エリアルシリーズ

石化完全無効の能力がついているエリアルシリーズの装備だが、26周年記念生放送によると名前の由来は「覚えていない」とのこと。
石化を防ぐから風をイメージしてエリアルと後付けで考えたそうである。

リメイク版収録の英語版では、さすがに石化とエリアルを結びつけるのは無理があるということになったのか、「Cosmic」シリーズとなっている。
cosmicは、「宇宙(規模)の」「無限の」「壮大な」などの意味合い。

ハルマゲドン

ハルマゲドン(古代ギリシャ語: Ἁρμαγεδών)は「新約聖書」の「ヨハネの黙示録」内に記された、世界の終末における最終的な決戦の地のこと。
古代ギリシャ語「Ἁρμαγεδών」をヘブライ語に翻訳した「Har Megiddo」(「メギドの山」の意味)の発音、または後述の「テル・メギド」から、「ハルマゲドン」という言葉が生まれたようである(このあたりは様々な研究があるようなので、興味があれば調べていただきたい)。
「メギド」はイスラエル北部に実在する地名。現在、古代の都市メギドの跡地は「テル・メギド」(ヘブライ語では「תל מגידו」、「メギドの丘」の意味)と呼ばれている。
現在、テル・メギドの地域はイスラエルの世界遺産「聖書ゆかりの遺丘群-メギド、ハツォル、ベエル・シェバ」の一部となっている。

本作では「ハルマゲドンエンド」ですべてが終わってしまう、つまり世界の終末そのままである。
「ハルマゲドンエンド」で流れる曲「ARMAGEDDON」があるが、「Armageddon」という綴りは英語での表記であり、発音としては「アルマゲドン」や「アーマゲドン」になる。
ハルマゲドンエンドについては、時田貴司氏がXで以下のようにコメントしている。

サブカルチャー方面では、1983年のアニメ映画「幻魔大戦」で「ハルマゲドン」という言葉が広まったといわれている。
漫画・小説「幻魔大戦」を原作としたアニメで、超能力バトルものであり、近未来編の超能力関連の描写にも少なからず影響のある作品である。
上のWikipediaによれば、アニメ映画版「幻魔大戦」は「超能力の描写として、キャラクターの輪郭が光って煙の様にオーラが立ち込める表現が初めて用いられた」作品とのことであり、本作のアキラの超能力描写にも反映されている。

日本ではオカルトネタとして有名になったため、上の「幻魔大戦」からの影響を含め、サブカルチャーにもしばしば登場する。
SFC版の発売時期は、世紀末やノストラダムスの大予言と絡んでオカルトネタとしても広まり、本来の意味とは異なる、間違った知識が広まってしまったこともある。
本来の「ハルマゲドン」の意味は「決戦の地」、つまり場所のことなのだが、ゲームに登場する場合、技名や魔法名になっていることが多い。
スクウェアのゲームでは、「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」でエッグモンスター・地球ちゃんの技「ハルマゲドン」として登場する。本作の少し後に発売された「バハムートラグーン」にも魔法「ハルマゲドン」が存在している。
「ハルマゲドン」ネタからやや遅れてだが、語源の「メギド」の方もサブカルチャーにおいて元ネタとして扱われることが増えた。例えばファイナルファンタジーシリーズであれば、8作目で「メギド・フレイム」という敵専用の技が登場して以来、いくつかの作品に登場している。

なお、中世編解説で紹介した漫画版「デビルマン」では、最終盤にて、デビルマン軍団とデーモン軍団との最終決戦「アーマゲドン」が描かれている。

魔王オディオ

中世編ではオルステッドと呼ばれていた人物の成れの果て。
中世編から最終編までの間に何があったのかはゲーム内では描かれていないものの、

  • ルクレチアから人間が居なくなっている(アムルクレチアの証言もある)
  • ルクレチアの森の立て札を調べると、「血のような跡が染みついていて読めない‥‥」と表示される
  • 心のダンジョンには、ルクレチアの人々の魂が囚われており、彼らの心を読むと魔王と化したオルステッドがルクレチアを滅ぼしたことが推察できる
  • リメイク版ではルクレチア城の一部が崩壊し、戦闘が行われたことを示唆している
  • リメイク版ではオルステッドを主人公にした際、マップに大量の血痕が付いている
    ※当攻略ではオルステッド主人公攻略 > マップについてのちょっとした小ネタ(ネタバレ&ホラー注意)で紹介している

以上の描写と、下の時田氏のコメントから、だいたい何があったかはわかるだろう。

なお、中世編から最終編の間はそれなりに時間経過していることも、時田氏がコメントしている。
おぼろ丸を最終編主人公にした時のベストエンドでは、オルステッドが「遠い昔に誰かにそんなことを言われた気がする」と返答するが、この「遠い昔」は何かのたとえではなく、本当に相当の時間が経過していたということのようである。

最終編にて、魔王オディオにはオルステッドであったことが記憶にない描写が何ヶ所かで見られるが、時間経過のせいか、魔王と化した影響なのか、そこまではわからない。
最終編でオルステッド以外を主人公にした際のマップには、中世編での地名が一切記されていないが、オルステッド主人公時のマップでは敢えて地名部分に血痕が付いているようにも見え、魔王オディオがわざと地名を塗りつぶしたという可能性もある。
まだオルステッドの記憶が残っている頃に塗りつぶした結果、最終編開始時にはその地名すら魔王オディオの記憶から消えてしまったのだろうか。

日本語版では「名前という概念すら消えた」ように各地の名称が設定されているが、英語版だとオディオの憎しみを込めた地名になっており、こちらも色々と考察してみると面白いかもしれない。
ちなみに英語版だと「最終編」というタイトルが「The Dominion of Hate」(憎しみの支配する地)とストレートな意味合いである。

日本語版英語版
中世編最終編最終編意訳
ルクレチア城廃墟の町Seat of the Betrayers裏切り者たちの地
ファミリオの村廃村Condemned Village呪われた村
ルクレチアの森静寂の森Silent Wood静寂の森
勇者の山雪山The Last Hero's Grave最後の勇者の墓

リメイク版では、中世編のオルステッドとのビジュアルの違いとして、赤いマントを羽織り、オディオ特有の赤黒いオーラに覆われている。
このマント姿は、2015年、スクウェア・エニックスのスマホアプリ「ホーリーダンジョン」に、「ライブ・ア・ライブ」中世編キャラがコラボ企画で登場した際の「魔王オディオ」のデザインが元となっていると思われる。
(「ホーリーダンジョン」は現在サービス終了。なお、ストーリーは時田貴司氏が手掛けていた)
「ホーリーダンジョン」のデザイン担当、創-taro氏は、この時の「魔王オディオ」のデザインについて、「マントはストレイボウの物」という想定で描いたと述べている。
あくまでもコラボイベントでの裏設定のようなものであり、リメイク版でのマント姿がどのような設定なのかは不明である。
また、ピュアオディオ戦後、魔王オディオは一度マントなしのオルステッドの姿になるが、その後7つの像の部屋で、イベント中に再びマントをまとった姿に「変貌」している。
マントは衣装の一部ではなく、彼にとって魔王としての概念の一部分が「マント」である、または魔王オディオの形態としてのひとつが「マント姿」である、という解釈もできる。

ラストバトル関係

ラストバトル前半戦のオディオの名称は、見た目のままのネーミングで、オディオアイ(eye)が「目」、オディオマウス(mouth)が「口」であるが、オディオモール(mole)は「ほくろ」の意味である。
額の位置にほくろのようなもの、というと仏教における白毫(仏の額の白く長い毛のこと、仏像などではほくろっぽく描写されている)のイメージなのかもしれないが……
リメイク版収録の英語版だと、オディオアイは「Eyes of Odio」、オディオマウスは「Maw of Odio」(Mawは「口」や比喩として「奈落」の意味)で、だいたい日本語版と同じなのだが、オディオモールは「Brow of Odio」、つまり「額(Brow)」となった。

初回プレイではなかなか余裕がないだろうが、このバトルのフィールドの造形、人間を憎み各シナリオの主人公たちと相対する「魔王オディオ」が、一見異形の姿と化しながらも「人間」の顔のパーツを模していること、オディオアイが「涙」とおぼしき水属性の技を使うこと、「セントアリシア」が愛憎含む表現であることなど、再プレイでは「彼」の心境を考えながらオディオのビジュアルや技に注目してみるのも興味深い。

技名だが、「セントアリシア」は言わずもがな、「saint」(聖者)に「アリシア」を付けたもの。善属性である点にも注目。
「デスパースペース」は、「despair(絶望)」「space(空間)」からだろう。
「ライブイレイザー」は「live」「eraser」で、「erase」に「消去する」の意味があるので「生命を消すもの」という意味なのだろうが、実際には「eraser」は「消しゴム」の意味で使われる。このためかリメイク版収録の英語版だと「Expunge」(削除、抹殺の意味)になっている。
「キャンセラレイ」は「canceler(取り消すもの)」「ray(光線)」であろう。

時田貴司氏はラストバトルについて以下のようにコメントしている。

Sinオディオ

「sin」は英語で「罪」の意味だが、リメイク版追加の敵であることから、日本語の「真」「新」の意味もかかっていることは想像に難くない。
姿は魔王山山頂の魔王像を模しているようである。SFC版の頃は謎だった山頂の魔王像の正体、ひいては中世編で語られる「ハッシュらが倒した20年前の魔王」について、リメイク版にて(明確にではないとはいえ)ひとつの答えが提示されたと考えて良いのだろう。
オディオよりも更に憎しみや狂気を感じさせる、Sinオディオの技名にも注目。

スクウェア・エニックスのRPGでラストボスが「シン」、ということで、2001年発売の「ファイナルファンタジーX」を連想した方も多いかもしれない。FF10の「シン」も「sin(罪)」からの命名で、(本作とは少し意味が違うが)元は人間であることや、ラストバトル終盤がほぼイベントバトルであることなど、Sinオディオ戦との共通点がいくつか見られる。

選択肢

最終編だけではなく他のシナリオでもそうだが、主人公により、選択肢の「はい」「いいえ」の表記が異なるのは最終編攻略にも記したとおり。
「半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!」でも、主人公の「はい」「いいえ」の選択肢が「うむッ!」「いかんッ!」と、一捻りしてあり、本作の元ネタになる。
(キャラのセリフの最後などが「~ッ!」になりがちなのも「半熟英雄」から、というよりは時田貴司氏ならではといえるのだろうか)

●各キャラの「はい」「いいえ」の一覧
キャラはいいいえ
アキラああゴメンだね
キューブYESNO
おぼろ丸むう滅相もない
ユンはいそ、そんな…
レイああ!何言ってんだい!
サモいいッチよダメッチ!
高原 日勝おうッ!いやッ!
ポゴウホ!ブルブル!
サンダウンああ…いいや…

また、「中世編では一切選択肢が出現しない」「最終編でオルステッドを主人公に選択した際も一切選択肢が出現しない」ことにも注目すべきだろう。
中世編ではストーリー上、いかにも選択肢が出そうな場面がいくつかあった。例えば中世編冒頭、アリシアが魔王にさらわれたことを国王がなげく場面で、オルステッドは前に歩み寄る。ここで「そなたが魔王を倒しに行ってくれるというのか?」という王のセリフの後に選択肢が出るのがRPGのお約束であるはずが、出ずに自動的に話が進んでしまう。
中世編ではラストシーンまで、主人公のオルステッドには選択肢を含めてセリフらしいセリフがないが、RPGによくある、プレイヤーが主人公になりきるため、主人公にはセリフがない、という演出ではない。
プレイヤーはオルステッドを操作しプレイしているはずが、実際にはRPG(role-playing game)の「RP」、つまり「オルステッドの役割(ロール)をプレイ」してはおらず、最後にはプレイヤーの手から完全に離れてしまう。
「コンピュータRPGの定番である、剣と魔法の世界のファンタジー」
「勇者が魔王を倒し姫を助けに行く」
「雑魚戦がランダムエンカウント」
「オルステッドのドット絵が、初期のファイナルファンタジーシリーズの主役ポジションである戦士やナイトに似ている」
という、RPGのお約束を詰め込んだように見える中世編だが、それらの中で「主人公になりきるため主人公にセリフがない」という点だけ、お約束に見せかけた嘘で、「選択肢が出ない」という伏線で示されていたのである。
「ゲームシステムを逆手に取った演出」は、リメイク版発売の2020年代では目新しいものでもなくなってしまったが、1994年当時は斬新で衝撃的な演出だった。
現在では目新しさはないとしても、リメイク版におけるボイスの追加や新曲「魔王オディオに捧げる絶望のフーガ」がここで初めて流れるという演出面の強化もあり、その衝撃はSFC版発売から28年を経ても色褪せることはなかった。

一方でリメイク版では、最終編の最後にもう一戦、発売前には秘匿されてきたSinオディオ戦が追加され、SFC版からプレイしてきたプレイヤーは再び衝撃を受けることとなった。
そして最後の最後、プレイヤーが再び「オルステッドをプレイヤーキャラとして操作できる」場面がある。
スクウェア・エニックスの公式YouTubeチャンネルでは、リメイク版「ライブアライブ」の実況プレイが行われていたが、その最終回の「狩野英孝のライブアライブ #14 -クリティカノヒット- - YouTube」に出演した時田貴司氏が、Sinオディオ戦についてコメントをしているので参照していただきたい。
時田氏によると、オルステッド自身に決着をつけてもらうことと同時に、「プレイヤーにとっては、プレイヤーに操作が戻ってきた、帰ってきた」というメタ的な意味も込めての追加要素だった、とのことである。
攻略にも記したが、オルステッドを操作できるようになった場面で、NS Yボタン/PS□ボタンを押して味方キャラのステータス画面を見てみてほしい。
そこには確かに、プレイヤーキャラとして、8人目の主人公のオルステッドの姿がある。

オルステッドzoom_in

ステータス画面でパーティメンバー、つまりプレイヤーが操作できるキャラたちを確認することで、オルステッドの立ち位置がはっきりわかるのもまた、「ゲームシステムを逆手に取った演出」である。
SFC版にはなかった、パーティメンバーのステータス確認画面が追加されたのは、利便性の他に、最後のこの演出を意図したものであったのかどうかまではわからない。

LIVE A LIVE

「LIVE A LIVE」の由来は、スクウェア・エニックスの海外向け公式XアカウントのFAQで、時田貴司氏が日本語で回答している。

X - Square Enix(2023年5月19日)

『英語では文法的におかしいとか、発音も「ライブアライブ」ではなく「リブアライブ」じゃないか、という意見もお聞きするんですが、僕としては「ファイナルファンタジー」のようにアルファベットが重なるかっこよさと、後はいろんなキャラの生き様を描きたいという意味でつけたタイトル』とのことである。


おまけ 噂話あれこれ

ここでは、元ネタや雑学とはあまり関係ないが、考察には一部関係がありそうなインターネット上の噂話について紹介しておく。

ヘッドプラッカーと魔王像の関係性

ヘッドプラッカーは、外見が魔王山山頂の魔王像と似ているため、中世編における「本当の魔王」の正体だったのでは?(ハッシュは魔王戦の後に、戦った相手は魔王などではなかったと発言している)、 そうでないとしても魔王と関係があるのでは? という考察があった。
山頂から引き返した後の異次元空間に出現する隠しボスという存在であることも、考察の一助となったのだろう。
だが、時田貴司氏はファンからの質問に対し、姿が似ていることについて、「偶然だと思いますね。ヘッドプラッカーを描いたスタッフは意識したかもしれません。」と回答している。以下ポスト参照。
X - Takashi Tokita / 時田貴司(2020年3月28日)

リメイク版ではSinオディオ戦が追加されたことにより、ハッシュらが20年前に倒した本当の魔王は(オルステッドを取り込む前の)Sinオディオで、魔王像はSinオディオを模したのではないか、という解釈もできるようになっているが、明確にそうだと断言されたのではない、という点に注意。
少なくとも、リメイク版において、中世編における20年前の魔王の正体はヘッドプラッカーよりSinオディオであると考える方が筋が通りそうである。

また、リメイク版ではボイスがついたことにより、ヘッドプラッカー戦前のセリフは「ヘッドプラッカーが喋ったのではなく、魔王オディオのセリフだった」ことが明らかになっている。SFC版では吹き出しに名前欄が表示されなかったため、ヘッドプラッカーのセリフだと思っていたプレイヤーも居ただろう。
このことから、ヘッドプラッカーは、ラストバトルにおけるオディオアイやオディオマウスのような魔王オディオの一部であり、ヘッドプラッカーを通して魔王オディオのセリフが発せられたということではないか。そして、魔王像に似ていたのは魔王オディオの一部だからである……という解釈もできるが、真相は不明。

最終編オルステッド主人公時のステータス関連

最終編でオルステッドを主人公にすると、各シナリオのラストボスを操作し、各シナリオの主人公たちを倒していく展開になる。
この時の敵味方のステータスについては、SFC版攻略本に詳細が掲載されていなかったこともあり、SFC版発売後から様々な噂があった。
その中で、「各シナリオの主人公たちのステータスは、各シナリオクリア時のステータスそのままである」というのは正しいのであるが、「各シナリオのラストボスのステータスには、中世編クリア時のオルステッドのステータスが反映されている」というのはSFC版でもリメイク版でも間違いである。
どうしてこのような噂が広まったのかだが、まずSFC版について考えてみる。
筆者の推測では、以下のような理由が考えられる。

  1. オルステッド主人公時に操作するラストボスの回復技の回復量が、各シナリオのラストバトルの時より増えている。
  2. バトル終了後、メニュー→装備でオルステッドのステータスを確認すると、その直前のボスのステータス(レベルとHPのみ)に変化している。
  3. ラストボスをプレイヤー自身で操作するため、勝てるように行動を選び操作できる。また、各シナリオの主人公たちの行動も、プレイヤー側が勝てるように設定されている(例えば当攻略にも書いているような回転嵌めなどの嵌めパターンを行ってこない上、操作キャラは向き変えと同時に移動や攻撃が可能なので、回転嵌めをされても困らない)。このことからラストボス側が強くなっているという錯覚を起こした可能性がある。
  4. 1. ~3. に加えて、ストーリーの流れから、「魔王オディオと化したオルステッドが各シナリオのラストボスに力を与えて勝利した」という解釈が不自然ではない(むしろ道理が通る)。

3.と、それに続く4.については思い込み・錯覚になるので横に置いておく。
1.だが、これは事実である。だが、ラストボスが強くなったから回復量が増えたのではない。
SFC版では、操作キャラと敵キャラとでは、HP回復技の計算式が異なる。
大雑把にいえば、操作キャラが使う場合は「基礎回復量×4×乱数」、敵キャラが使う場合は「基礎回復量×乱数」で回復量が計算されている。
例えば、現代編ラストボスのオディ・Oがラストバトルで使う回復技「テリブルシャウト」の回復量は、現代編ラストバトルの敵対時だと回復量は「20~24」だが、最終編オルステッド主人公時に操作キャラとして使う時の回復量は「80~99」と、4倍の差がある。
本作のダメージ量・回復量計算式はSFC版攻略本では明らかにされておらず、後に有志の方々の解析で判明しており、この事実だけでは「操作キャラ側が何らかの理由で強くなった」=「オルステッドのステータスが反映された」という推測がなされても無理もない。

2.も、実際にプレイすればわかる通りにこの現象は発生するのだが、これは単純にバグの類のようである。
詳細は筆者にはわからないが、おそらくSFC版では、戦闘終了時、その戦闘の操作キャラ1人目のレベルとHPの値が、戦闘終了後にメニュー画面→装備の1人目のレベルとHPの値にそのままコピーされるような仕組みがあるのだと思われる。
他シナリオであれば、戦闘中とメニュー画面でのキャラ編成は同一なので、この仕組みで問題は起こらないが、最終編オルステッド主人公時は、戦闘中とメニュー画面でのキャラ編成が異なるため、このような現象が発生するのだろう。
近未来編でのブリキ大王操作時もこの現象が起きてもおかしくないのだが、実際には起こらないため、何かしらの方法でこの不具合を回避していると思われる(ただしブリキ大王操作時はセレクトバグでブリキ大王独自の挙動があるため、戦闘中とメニュー画面でのキャラ編成が異なることによる影響は何かしらあるようだが)。
何にしても、オルステッドのステータスの一部がラストボスらのステータスに変化するという現象が実際に起きることから、4.の件も加えて、オルステッドのステータスがラストボスに影響を及ぼしていると考えるプレイヤーが居ても不思議ではない。

以上がSFC版での話である。
リメイク版発売当時もまだ、噂話として「各シナリオのラストボスのステータスには、中世編クリア時のオルステッドのステータスが反映されている」があちこちに残っていた。
リメイク版発売前に、最終編オルステッド主人公時、各シナリオの主人公たちをレベル上げしすぎて強くなっていると勝てなくなってしまうというSFC版の難点は調整をしてあるというコメントがあり(『ライブアライブ』リメイクの新要素や変更点を時田貴司氏に訊く。何度も続編やリメイクにトライし断念、浅野チームに合流してついに実現 | ファミ通.comの、「最終編でとある主人公を選んだときに~」の質疑応答について参照)、ここからも、オルステッドのステータスが影響するのではと考えた方も居たかもしれない。
だが、実際には、リメイク版でもオルステッドのステータスは反映されない。
筆者の実際の検証は最終編攻略 > オルステッド主人公攻略 > 敵対キャラのHPについての検討にあるので参照していただきたい。

最終編のブリキ大王には、アキラのステータス・装備・装備による状態異常無効化が反映される

これも上のオルステッドの件と似たような話になる。
SFC版において、近未来編のラストバトルと、最終編個別ラストバトルを比較すると、後者の方がブリキ大王の方が与えられるダメージ量が高く、腕かため・足かため状態になることもないので、最終編でレベルアップし大半の状態異常を無効化できる「ド根性グラブ」を装備したアキラのステータスがブリキ大王に反映されているのだろう、という噂である。
オルステッド同様に、ストーリー的にも、ブリキ大王にアキラのステータスが影響している方が、スーパーロボット的な演出として納得できるという考えもあったと思われる。
だが実際には、近未来編も最終編も、ブリキ大王のステータスは同一で、アキラのステータスは影響していない。
変化しているのは戦う相手の隠呼大仏のステータスの方で、ほとんどのステータスが弱体化している。
SFC版ではレベルの値が、ダメージ量から命中・回避率、状態異常発生確率まで、広く関わっている。そのレベルの値がかなり下がっていることが一番の影響である。その上、HPも6割近くまで減っている。

シナリオ名前レベルHP
近未来編隠呼大仏1820328888196108
最終編隠呼大仏121280116116124108

近未来編ラストバトルはブリキ大王もそこそこダメージを受け、それなりの確率で腕かため・足かため状態にもなる。
だが、最終編でのブリキ大王戦は、「バベルノンキック」2発で片付いてしまうのであっという間に戦闘が終わってしまう。
このため、最終編のブリキ大王は「腕かため・足かため状態になることもない」と思われているようだが、実は戦闘を長引かせて隠呼大仏の攻撃をくらい続けると、低確率だが腕かため・足かため状態になることを確認している。
つまり、最終編でブリキ大王が状態異常になるのを見る前に勝ててしまうので、「状態異常になることはない」と思い込んでしまったプレイヤーが、「ド根性グラブ」の効果が反映されていると考えたのだろう。

一方、リメイク版では、SFC版ほどあっさり倒せないよう、最終編でのブリキ大王戦に調整が入っている。
この結果、最終編でブリキ大王に腕封じや足封じが入る場面を通常のプレイでも見るようになった。
このことで「リメイク版では最終編のブリキ大王に状態異常が入るようになった(SFC版より弱体化した)」という、妙な誤解も生じてしまったようだ。
実際にはSFC版でもリメイク版でも、近未来編・最終編問わず、ブリキ大王には状態異常が発生する。



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